空につながるための家

ズシンと幸せ

抗がん剤治療も後半戦、ファルモルビシンにはもう心からうんざりしていて、毎日アスタリフトの化粧水の赤い色を見るたびにオエー、オエーと吐き気をもよおしていたのでよい潮時だわ。
心機一転、ドセタキセルさん、こんにちは。あなたもよい仕事してね。
ドセタキセルは全身激痛とか、感覚麻痺とかしびれとか爪がはがれるとか、恐ろしい話も耳にしたけれど、一回目は特に激烈な副作用は出ず、倦怠感のみで、ほっ!(一回得した)
が、段々その倦怠感が増してきて、室内を歩くだけで息絶え絶えになってきた。






投薬から1週間、一番体調が落ち込んだときが通院日、病院の駐車場からエントランスまで歩いたら心臓バクバク、しかも普段は気にも留めていないのに、病院が臭くて臭くて(薬の匂いと男性、特に年配の男性がダメ)。
いつもと同様、激混みの外来は、唯一空いているイスがおじいさんの隣で、待つこと1時間半、気分の悪さも限界近くなってきた。
そのとき、看護師さんがアナウンス、
「○○先生の外来は今9時の患者さんを診ています。10時の患者さんはあと1時間程は席をはずしていても大丈夫です」
そうだ、私も時間を教えてもらって、外の空気を吸ってこよう♪ロビーの長椅子で上半身だけ横になってもいいし♪

私「すみません。9時半予約のものですが、気分が悪くなったので…」
外の空気を吸いたいんですがあと何分待ちですか、と後半を言わせず、いきなり看護師さんが真剣な顔になって内線電話でどこかと話を始めた。
看護師「ベッドの用意ができました」

ちょっとロビーで横になれればいいんです、と断ったのだが、車椅子で連れて行かれそうな勢いで、大丈夫です、自分で歩けます、本当に大丈夫ですから、とベッドで休ませていただいた。

ひいいいい、病院で気分が悪いなんて、言うものではなかった。
たかが初発の、末期でもない私が恥ずかしい。
ここで待ってる大勢の人、みーんながんだよ。しかも多くは年配の方だったり、再発だったり進行性だったり、子育て中だったり、フルタイムで仕事してたり、私よりずっと大変な人たちだよ。

まあ、でもフラフラしていたのも納得、また例によって、白血球値が700まで下がっていた。
主治医に1週間の入院を勧められる。
7日間でベッド代だけで7万円、なんやかやで…10万円くらい?
うわーっ!!
私「大丈夫です。自宅で安静にしてますから。どうせ動けませんから。大げさにしてしまってすみません。大丈夫ですから」

何が楽しくて、10万円払って、一週間も毎食フエキ糊みたいなご飯食べなくてはならないのだ。
お金払うのだったら、いい温泉旅館でたらふくご馳走食べて、自然の中露天風呂に浸かりたいのだ。


好中球が増えるお薬をブスッと注射してもらい、ベッドで休むように言われながらも、大丈夫です、治りました、すみません、すみません、と帰宅。
運転途中、マクドナルドの赤と黄色のMが目に入り、すうーっと入ってしまう。
久しぶりのジャンクフード、揚げたてのポテトを忙しなく口に運びながら、おいしいよー、おいしいよー、と独り言が出まくる。
味覚障害で、塩味は分からなかったのだが、サクサク、ホクホクした食感、アツアツの温度、お腹にずっしりと降りてゆく感覚はよーくわかる。
続いてクオーターパウンダーもペロリと平らげてしまった。
ああ、しばらくポリッジとかおかゆとか、ぼんやりしたものばかり食べていたので、こういうガッツリしたもの、生きてるって感じ!!
これであとで吐いてもいい、口内炎になってもいい、だって今幸せだもん、と思った。

ふふふ、入院しないでシャバ感全開のジャンクフードを腹いっぱい食べてやった。
その後しばらくはおとなしく寝て過ごしたのだが、復活したらあそこの梅を見に行こうとか、あそこのあれを食べようとか、あらゆる楽しい企みばかりを妄想しまくった。

今は全然大丈夫。
トントントンッと階段をあがれるし、今日は犬の散歩に2時間半歩いて全然平気。
これから一週間はいっぱい動くぞー(来週はまた妄想週間)。


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