空につながるための家

トリー闘病7 〜病院の予約を入れる〜

トリーを病院で診てもらおうと思ったとき、子犬の頃からいつもお世話になっている近所のAクリニックに連れて行く気になれなかった。

Aクリニックは、ベテランの獣医のご夫妻がなさっていて、スパッと決断の早い奥様が院長をされ、穏やかでやさしいご主人が主に休日や夜間を担当されていた。
訓練が入っていなくて、暴れ馬みたいだったトリーを、「この子は性格よしおくんだ」と励ましてくださったり、断耳のあと夜中に大量出血したトリーを「不眠症ですからいいんですよ」と診てくださったり、このご夫婦に最後までお世話になるんだと、信頼していた動物病院だった。
でも、お二人も歳を重ねられ、院長先生の奥様に代わって最近は若先生の娘さんが主に診療をされるようになり、ご主人もお仕事を離れ、引退されているご様子だった。

若先生は、痛みを伴う治療中でも決して鳴いたり暴れたりしないトリーに、口輪を使った。
供血のために治療台の上でがんばるトリーにご褒美のナマ肉を用意したときも、口輪のせいで、与えることができなかった。娘さんが、「トリーくん、おりこうね~」とおっしゃるたび、心のなかで、「おりこうだと思ってないくせに」としか思えなかった。
薬の量を間違えられたり、トリーの年齢を間違えられたり、小さなミスが続いた。
トリーが子犬の頃から悩んでいた下痢も、数年前からときどき起こっていた腰の痛みも、結局原因がわからないまま(膵臓が悪いんじゃないかとか、自己免疫の問題で検査も治療もできないとか)、そのときそのとき対処して、なんとなくここまできてしまっていた。

患畜のほとんどは小型犬で、待合で、怖いとか、噛まれるとか、あからさまに言われたり、嫌な顔をされたりして、後から来た人に椅子を譲ってずっとトイレの前で立っていたり、外で待っていたり...そんな雰囲気だから、なるべく早くすませて帰りたいのに、私用の長電話で待たされて、会計が遅れたり。
犬を飼うときに、信頼できる獣医さんといい関係を築いておくことは大事なことだったのに、何年もの間に、小さなモヤモヤが積もって、いつの間にか、不信感を持つようになってしまっていた(トリーにとっては、Aクリニックは変わらず大好きな場所だった。小さい頃から行きつけていて、必ず治療をがんばったご褒美のおやつがもらえたから)。

Aクリニックじゃない病院へ連れて行こうと思ったとき、まず頭に浮かんだのが、訓練士の先生のお話にたびたび出てきたB動物病院だった。
訓練士の先生の愛犬もそこで九死に一生を得たそうだ。関西から通ってくる人もいるらしい。

B動物病院に電話をして、院長先生を指名し、一番最短の5月7日に予約を入れた。

そんなことないと思いたいけど、連休明けの福島旅行はもしかしたら最後の遠出になってしまうかも。うんといい旅にしようね。
ふたがカパカパだったトリーツバッグを新しく注文した。
だんだん歩行が不自由になっても、ちゃんとトリーの面倒をみられるように、私も体調を整えておかなくちゃ。
2年前から検診でひっかかっていた項目、病院に再検査の予約を入れた。
これから、ふたりでがんばろうね、トリー。
大丈夫、B動物病院はすごく有名ないい病院だから。

トリーの足に負担をかけないように、近所の公園をちょこっと散歩するだけにした。
痛みではなく、感覚がなくてフラフラする感じ。
公園を歩いていたおじいさんが、トリーを見て、手を差し出してきた。
近づいてかわいがっていただいた。トリー、よかったね。

いつも、公園から引き返そうとすると、もうちょっと歩こうよ、遠出しようよ、とねだるのに、この日はさっさとうちに帰るコースを素直に従った。
やっぱり辛いんだな。
5月7日にわかる。5月7日を待とうね。


獣医師に不信感をつのらせる前に、ひとつひとつ、ちゃんと言葉に出して解決しておけばよかった。
いつも通う町のクリニックばかりでなく、高度医療を行う大規模な動物病院とその特性、連休や夜間などにも緊急時に対処してくれる救急病院などについて、普段から情報を集めておくべきだった。


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