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空につながるための家

共鳴Vol. 3@下北沢MOZAiC

犬に夕飯を与えている間にこそっと家を出て、下北沢へ。





開演まで、お茶でもしようかな、ヴィレッジソースでも買おうかな、とプラプラ歩いていたら、目の前を遠方にいるはずの知人が...
急にご予定が変わり、ご主人の粋な計らいで、ご夫婦で急遽車を飛ばして来られたのだった。 すばらしい。

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RAT
いきなり、なんていうの?それぞれのバンドにある、落語でいうと出囃子みたいなもの、あれが大音量で鳴り響き、わっと驚いたら、ご本人達が登場して、客席に背を向けて...
どうするんだろう、どうなるんだろう...と注目と期待が高まったところでブツッと”出囃子”が止んで、それと同時にくるっとこちらを向いてドーンとそれ以上の大音量で演奏が始まって。
いきなり大波が来て、サーフボードに乗ったみたいに、3人が同じ高まりに見事に乗って、オラオラオラオラーッ行くぜ行くぜ行くぜーっという状態に。本当にいきなり。
すごいロックで。
なんというか、ロックを新解釈したり、ロックと何かを融合したり、ロックにリスペクトを示して、というのではなく、どこを切っても、彼ら自身が100%ロックそのもので。
ヴォーカルの人、胸に刺青をしていらっしゃるようだった。
もう、音楽活動がダメだから、サラリーマンになるよ、とかいう道がないではないか(社員旅行の温泉とか)。
すごいなあ。

考えてみたら、ロックをする上で最低人数、ミニマムの3人しかいないのに、この十分な、余りある感じはなんなんだろう??
しかも、ヴォーカル&ギターの人はときどきギターを弾いていないし、ベースの人だって、ほら、今手を止めてるよ。なのに、なんでこんなに充実しているんだろう??
途中から不思議で仕方なくなって、楽器のパートひとつひとつを聞き分けようとしたのだが、音が一緒になってこちらの体に入ってくるので、うまくできない。
もう1台楽器なかった?舞台の袖にもう一人秘密のメンバーがいるとか、あのドラムには細かい音程がついていて、メロディラインも叩けるとか??

最後はヴォーカル&ギターの人が舞台からジャンプして客席で演奏。
客席の皆、喜ぶ!喜ぶ!
ああ、楽しかった。
さわやか。気持ちよい。
反骨精神とか、社会にたてつく気持ちは毛頭ない私だけど、生きるということは、皆一緒だものなあ。


Seseragi 25.
ネットで歌を聴いて抱いたイメージは、「叙情的でフォーク調で、ちょっとスピッツみたい。80年代のポップスや歌謡曲に馴染んだ私の世代に受け入れられそう」
実際にライブで見たら全然違った。
ヴォーカルの方、呪術師のように目を剥き、かと思うと歌のお兄さんのように一瞬にしてさわやかな笑顔を浮かべながら、猫のような不思議な動きをして、きれいな声で、きれいな歌を歌うのだが、丁寧にきれいな声できれいな言葉を歌うほどに、その言葉の本来の意味が薄れて、空虚になってゆく。
「君の」「言葉」「夜」...
ひとつひとつの言葉を、発するごとに、ね、おもしろいでしょ?こんな風にもできるよ、と、手品のように手の平に載せていろいろに見せて、最後は、ガラス製のキューブになっちゃった、みたいな感じ。
分解して、再構成して、そうしたら、全然違うものに見えてきたというか。

あんなにびっしょり汗をかいてパフォーマンスしていらっしゃるのに、ひんやりとして動かない冷静な視点があって、すごく知的な印象。
全然、”昔懐かし”じゃない。だけど、カリカチュアではなく、純粋に好きで捧げている風なのが、メンバーの方の風貌に表れていて。
(キーボードの方、タイガースの頃の岸部一徳に似てる!ドラムの方は70年代のTVドラマでよく見たような)

演奏者が皆ユラユラフワフワ踊っていて、客席も踊っていて、そのうちにボーカルの人が立ち尽くし、間奏が苦しくなる位ずーっと単調に続いて...客席の踊り最高潮に、そこでドカーンとまた演奏が次の段階に進んで、客席で喜びが爆発して。
キャー楽しい。こんなの初めて。


Sugar Salt
私は出入り口付近に立っていたのだが、演奏が始まっても3曲目くらいまでは、遅れて到着したお客さんが入ってこられて、そのたびに道をあけたり場所を譲ったり、「キャー、遅くなっちゃった」みたいな会話が繰り返されたり。
なので、一曲目のリビドーで、カワシマ氏がギターの柄を振り上げたときに涙がじわっとわいて、振り下ろしてジャーンが鳴り響く瞬間ににはその涙がこぼれているというような、いつもの「感動して没頭して違う世界に入ってしまう」状態にはならず、わりと冷静に周囲を見られた。
じっと立ってうっとりと舞台を見るきれいな女の子。
携帯で彼らの写真を撮って見せ合っている女の子(持ち歩けるからお守りになるよね!)。
お仕事がやっと終わったのか、サラリーマン風の男の人(本当にお好きなのだな)。
娘さんに連れられてきたのか、目をキラキラ輝かせた50代位の女性。
客層も、楽しみ方も幅が広いなあ。

私はといえば、次々に入場する人達に押され、気がついたら、「踊り子さんには手を触れないでください」的な位置に。
カワシマさんの手の甲に浮かんだ血管や白シャツのレースの穴の一個一個、ヤマDさんの真っ赤なシャツから見える胸どころか、その胸のホクロや肌の質感まで、全部見えまくり。
こ、これは...演奏に集中するどころではなかった(汗)

ベースの亮さんの手元がほんの2m先!!
あんなにすごいことをしているのに、なんてほっそりとしたきれいな指だろう!
手首はぶらんとして柔軟で、だから自由自在に表現ができるのね。
いつも、控えめに演奏されている印象だったけど、ちょっとソロっぽいパートもあって、途中、華やかなパフォーマンスも見せてもらい、大満足!

いつも華のある大きな動きやギターソロばかり注目してしまうヤマDさんも、右から拝見すると、繊細に注意深く演奏される部分や、カワシマ氏の声が生きるクセのない美しいコーラスや。

ドラムのトモさんもコーラスをつけていらっしゃたのね(いつも見えない位置だったので)。ドラムの見せ場もあってうれしい!
MCの中で、もうこのイベントが成功に終ったかのようにおっしゃり、言い直していらっしゃった。
ずっとこの3.0に向けて気持ちを上げてきて、練習を積んで、コンディションも整えて、もう失敗するはずがない。
この幸福な時間の一瞬一瞬を胸に刻みつけて、一音一音を最高のものにして提供して、最大限に楽しもう、という感じ。
4人それぞれの個性が際立って、魅せられる機会がどんどん増えてきているのがうれしい!

いつか感じたような、ドロドロとした地べたに這いつくばって、遠いところにある青空を見上げるような、絶望の中の希望とか、不吉な中での一筋の光とかいうものはもうなくて、幸福感と感謝に満ちた中でぐんぐん昇ってゆく様子を安心してみていられる。
...でも、興奮と幸福感に満たされているのになにか違和感が。
多分、あのアットホームな温かさ。あれが最高潮、皆に感謝してあれでひとつのお祭が終ったというような爽やかさ。
伸びて高みに上がってゆく過渡期だからこその不自然さなのだと思う。
他の方の演奏のとき、舞台を見つめていた亮さんの真剣な目つきが思い出された。
この人達にあって自分たちにないものがもしあれば、全部吸収してやる、ぐらいの勢いの目つきだったなあ。
彼があんな目をしている限り、Sugar Saltのこれからは大丈夫とほっとする。
きっと、Sugar Saltを聞くのが初めての何千人の前でも、光と闇、希望と絶望、肉と精神...全てがつまった彼らの世界を提供して魅了してゆけるはず。
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